2025年1月24日

AIは理系? 文系?

 若い人たちと話をしていると「ぽい、ぽい」というフレーズを聞くことがあります。


「ぽいって何ですか?」

「それっぽいということですよ」

「それっぽいってどういうことですか?」

「私の想定に近いということですよ」


こんな会話をすることがあります。これまさにAIの思考法ではないでしょうか。


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AIも、一生懸命学習して、「ぽい」の感覚を研ぎ澄ませています。

「これ犬ですよ」「これは猫です」と何千枚もの写真や動画を見せて学習させます。1万の学習データを読み込んだAIは犬と猫の違い、すなわち「犬っぽさ、猫っぽさ」を詳細に習得します。それを踏まえて1万1枚目の画像を見せると、ほとんど間違いなく犬と猫を見分けます。こうしてみると、AIは私たちに近い感覚を持っているように感じます。


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私たち文系にとって、AIは理系的なものにみえ、「難しい」と敬遠しがちです。また、異質なものとして偏見を持ちがちです。しかし、文系的な感性を持ったものがAIだとわかれば、ドラえもん的な何かとして身近に感じられるのではないでしょうか。心理的な障壁を超えられれば、AIの浸透も加速すると思います。


TF-IDFを紹介するのに、次のようなたとえを用いることがあります。春休みや冬休みなど、長期休暇の後、久しぶりに大学のキャンパスに戻ってきたとしましょう。「友達と再会するかも」と思いながら歩いていると、向こうから友達らしき人が歩いてきます。10mくらい離れているときには「この髪型、この服、この靴、この歩き方をするのは佐藤くんだな… 久しぶりだから挨拶しようかな」と身構えつつ歩きます。佐藤くんの特徴を大まかに捉える指標がTFです。そのうち、他の人にも共通する特徴は、佐藤くんを見分ける最重要の要素ではありません。佐藤くんにしかない特徴こそ、佐藤くんたらしめるものです。これがIDFです。


だんだん距離が縮まり解像度が上がってくると「あっ、やっぱり佐藤くんだ。こんにちは」とか「あっ、佐藤くんじゃない。慌てて挨拶しなくてよかった…」とか最終的に判断します。こんな私たちの認識の仕方と似たメカニズムでAIも動いていると考えると、人間味がある存在だな、と思えてきます。


AIの普及について悲観的な見方もありますが、私が身近に接している若い人に簡単なアンケートをとったところ、94%が使った経験があるという回答でした。しかも、AIの良いところ、今一つのところをよく知って、良いところを引き出すような使いかたをしているようでした。私たちが心配するに及ばないのかな、と感じています。


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知能には、これまで重視されてきた論理力(ロジック)の他に、あまり重視されてこなかった(というより過小評価されてきた)感性の2とおりがあるように感じます。どの世界でも、プロ中のプロは、1つ1つ手順を追った分析より、むしろ天才的な閃きとか直感を大切にしています。AIの深層学習(ディープ・ラーニング)は、そうした人間の可能性を目の当たりに見せてくれるようで、少し嬉しくなります。


Don't think, just feel !